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2016年に読んだ本

2016年は180冊くらい読んだようです。読書傾向としては国内一般小説が多め、あとは翻訳ミステリー、ノンフィクション、新書をちょっとずつ読んだかなという感じ。相変わらず方向性の定まらない読書をしています。海外文学をあまり読まなかったのが心残り。来年はガイブンを強化していきたいです。

では今年読んだ印象に残った本を。

 

『大きな鳥にさらわれないよう』川上弘美

今年読んだ日本の小説では圧倒的なクオリティの高さ。滅びゆく人類の営みがやわらかな文体で少しずつつづられていく、でもこれはいったい未来の話なんだろうか?わたしが生きているいまのことなのかもしれないし、もしかしたら遠い昔のことを語っているのかもしれない。ゆるやかに円をえがく構造も見事。

大きな鳥にさらわれないよう

大きな鳥にさらわれないよう

 

 

『自生の夢』飛浩隆

飛浩隆十年ぶりの作品集とあっては胸が高鳴らずにいられましょうか。まったく期待を裏切らない素晴らしい短篇ばかりで溜息しかでない。すべてを凌駕するイマジネーションの奔流にのまれるのがもはや身体的な快楽。この人と同じ時間に生きていてほんとうに幸運だとおもう。『空の園丁』、たのしみに待っています。

自生の夢

自生の夢

 

 

『美しい距離』山崎ナオコーラ

癌の妻と看取る夫というストレートなテーマをこの人が書くとこうなるのか、という。もちろん夫婦や家族の関係の物語なんだけど、個人的に心に残ったのはお仕事小説としての一面だった。看病する夫は当然仕事を続けているし、病をえて入院している妻もまた仕事を通じて社会とかかわりつづけようとしていて、そこを閉ざしてしまわないようにすることがとても大切に書かれている。亡くなっていく人が遠くなっていくことを、美しい距離、と表現する感性がとても好きだ。

美しい距離

美しい距離

 

 

『彼女がエスパーだったころ』宮内悠介

2016年も活躍が目立った宮内悠介。タイトルそのまんまの『スペース金融道』(痛めつけられる主人公が不憫かわいい)、囲碁を題材にとった『月と太陽の盤』もよいですが、ひとつ選ぶならこちら。疑似科学というややもするとどこからも反発をくらいかねないテーマを実にたくみに扱って、しかも最後はちょっとほっこり。ベストは「ムイシュキンの脳髄」かな。芥川賞とれるといいですね。

彼女がエスパーだったころ

彼女がエスパーだったころ

 

 

『蜜蜂と遠雷』恩田陸

恩田陸の書く直球の音楽青春小説。コンテストの舞台裏というと、どろどろの人間関係と足の引っぱりあいが想像されるところですが、この小説では葛藤はあるものの基本的にみな明るく音楽を愛しまた音楽に愛されているキャラクターばかりなので、非常にさわやかに気持ちよく読み終えられて、万人におすすめできる一作。直木賞とれるといいですね。

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

 

 

『尻尾と心臓』伊井直行

伊井直行もまた寡作なので、本が出るたびに熱い気持ちで読んでいるけど、話自体は地味すぎてカタルシスのない会社員小説なので、とにかく人にすすめにくい。でもおもしろいんだよ。いわゆる会社員をやったことがないので、リアルな他人の仕事をのぞいてる感覚が楽しかったり、でもちょっとだけわかる部分があったり。『会社員とは何者か?』とあわせて読むといいでしょう。

尻尾と心臓

尻尾と心臓

 


『浮遊霊ブラジル』津村記久子

とにかくこの中の「地獄」がわたしは大好きで、タイトルどおり地獄に落とされた女性の話で、その地獄が物語消費しすぎ地獄ということで様々な苦行をやらされるんだけど(一日に何回も殺されたり)、監視員の鬼が不倫問題に苦しんでたりしてその相談に乗ったりとか解決しちゃったりとかで、地獄意外と楽しそうじゃん。津村さんこれ楽しんで書いたんだろうな。

浮遊霊ブラジル

浮遊霊ブラジル

 


『キャロル』パトリシア・ハイスミス

もうこれは映画とあわせて読んでほしい1冊。物語がすすむにつれてキャロルとテレーズの関係もうつりかわってゆく、ほんとうに見事に美しい恋愛小説。映画は、ケイト・ブランシェットの背中がとてもいい演技でした。

キャロル (河出文庫)

キャロル (河出文庫)

 

 

『黄昏の彼女たち』サラ・ウォーターズ

こちらも女性同士の恋愛がテーマなんですが、ふたりの関係がじれじれとすすんでいく上巻とそれが崩壊していく下巻がもうどちらもたまらない。身もだえしながら読みました。これも映画化してほしい。ミシェル・ドッカリーとエマ・ストーンとかはどうでしょう。

 

小説以外の本もすこし。

『村に火をつけ、白痴になれ』栗原康

今年読んだ中でもっとも衝撃的だった1冊。伊藤野枝の生き方はもちろん、評伝をこんなに自由な文体で書いていいのか、あとこのあとがきはアリなのか、何でこの本が岩波書店から出たんだ、などなど。パンチライン満載の本ですが、わたしがもっとも好きなのは「お金がないならもらえばいい」です。読むと元気がでるよ。

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

 

 

『プリズン・ブック・クラブ』アン・ウォームズリー

『戦地の図書館』モリー・グプティル・マニング

刑務所と戦場という、ある意味どちらも極限の状態で本はいったい何の役に立つのか、本が好きな人にはぜひあわせて読んでほしい2冊。 本を届けるために尽力する人々の物語にもぐっとくる。

プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年

プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年

 
戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)

戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)

 

 

それでは皆様、よいお年を。来年もよい本にたくさんであえますように。